タイトルにある「あびき」とは、一般に副振動と呼ばれるもので、
たった数分~数十分という非常に短い周期で海面が急激に変化してしまう現象です。
早い流れで魚の網が流される「網引き」に由来するそうで
古くから長崎の漁業関係者の間で、春先に起きる怖い現象として言い伝えられてきましたが
今では長崎だけではなく九州西岸の地域で、このあびきという言葉が用いられるようになっています。
上のグラフは2009年2月24~25日にかけての長崎港の潮位変化です。
24日の23時頃からのわずか1時間以内に海面はなんと最大で157センチも変化しています。
この大きなあびきが発生したことで
海面が急激な昇降変化を繰り返し
小型漁船が沈没・転覆したり、道路が冠水するなどの被害が発生しました。
冬から春にかけて大きなあびきが発生しやすく、特に3月に多くなっています。
あびきは九州の南岸を低気圧が通過する時に起こりやすいと言われています。
きょう広い範囲で雨を降らせたのも南岸低気圧でした。
つまり、冬と春の空気がぶつかるちょうどこの時期に起こりやすくなるということなんですね。
ただ、最新の一か月予報によると、この先しばらくは春の空気が優勢に。
そのため、南岸低気圧も予想されていません。
今年のあびきシーズンは終了と言えるかもしれませんね。
ただ、あびきの発生メカニズムは未解明なことが多いのが実情です。
予測が難しく、高気圧に覆われた天気の良い日に突然発生することもしばしば…。
大きなあびきは稀な現象ですが、シーズンが終わったから絶対安心というわけでもなさそうです。
※掲載しておりますグラフや写真は長崎地方気象台のHPから引用いたしました。